『戸村飯店青春100連発』

戸村飯店青春100連発
この人の本は数冊読んでぴんと来なかった。読みやすいしYAとしてもいろいろな意味で「手頃」だなと思ってた。でもこれは当たり。ジャストミートって感じで、私にはすごくはまってしまった。

大阪の下町にある中華料理屋が戸村飯店。ここの家のヘイスケとコウスケ、年子の兄弟の話。兄は昔から要領がよくて頭もよくてかっこよくて女の子にモテモテなんだけど、大阪の下町〜って雰囲気が好きじゃなくて、高校卒業後は「とりあえず」東京へ。このへんの場当たり的というか鷹揚さも、今まで大した苦労もなく如才なく生きてきたんだなあってすごく思う。まあ隠された挫折があるんだけど。弟は勉強もできなくて顔は大雑把で、単純。でも飾らない感じで誰からも親しまれて愛されてる。本人はそのことにあまり気づいていなくて、兄へのコンプレックスがあったりするんだけど。ずっと好きな女の子も兄にラブレターとか書いちゃうし。この兄弟の1年間の話。
最初は完璧な兄にコンプレックスを持つ弟の話、って感じなのかと思ってたけれど、ヘイスケにも焦点がしぼられていく。それがものすごく面白くて。特に長男のヘイスケみたいな人ってわかる!いるこういう人!って思った。私は男きょうだいはいないし、男同士のきょうだいってどんな感じが実際には知らないけれど*1ここも結構リアルなんじゃないのかなと思った。

桜庭一樹のときも思ったけど、食わず嫌いはよくないね。面白い本を見つけたら、同じ作家の別の作品も読んでみるっていうのは、好きな本を増やす有効な方法のひとつだし、実際学校で働いていた頃、「そういうふうに読んでいくのもおもしろいよ」って学生や児童にも言っていたけれど、その逆(=「ひとつふたつ面白くなかったらその作家の本はもう読まない」)はよくないんだなあと思った。

*1:私は年子の姉妹。