『卵のふわふわ』

卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)
恋愛(がメインの)小説は基本的に読まないんだけど、この本は恋愛小説としてすごく好き。


隠密廻りの正一郎に嫁いだのぶは、自分にものすごく冷たい、時には手をあげたり、ひどく罵倒されたりもするけれど、美食家で甘えん坊の舅と、口は悪いけど優しい姑のおかげで頑張ってる。普通逆だよね、姑とうまくいかないとか。もう正一郎がものすごくむかつくモラハラDV男で。じゃあなんでそんなとこに嫁いだかっていうと、まあネタバレになってしまうか。

ついに耐え切れなくなってのぶは離縁することにして実家に帰るんだけど、お勤めのこともあるし実際にはまだ離縁していないしで、なんだかんだで正一郎に会う機会もある。そんなふたりの関係も―というか、正一郎さんも変わっていって。この変わりっぷりがすごい。

正一郎さんは昔から娘たちの憧れで、仕事も花形で、っていう人なのでのぶにもずっと横柄で下に見た態度をとってきたんだけど、我慢をやめたのぶや、その思い切った言動に呆気にとられたりする。ふとしたときにのぶを、例えば抱き寄せようとしたら拒まれて、「そんなに嫌か」って傷ついた顔をしたりする。そういうところが、もう。弱いんだよなーこのテの話。
このふたり、夫婦になってから恋愛をするんだよな。もうきゅんきゅんです。前半の正一郎には本気でむかつくけど。笑


勿論書名にも各章のタイトルにもなっている美食家のお舅さんも、のぶちゃんとの関係もいい。そしてお舅さんとお姑さん夫婦も素敵。終わり方もいいと思う。