『風に舞いあがるビニールシート』

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
幼馴染に「きみのExにすごく似てる人が描かれてるよ」と薦められたのが最初。大学生の頃。今回は久々に読み返した。友達がゆってたのは表題作なんだけど、ほんと読んだ当時はぼろぼろ泣いたし、確かにExに似てるし、いちばん残る話だった。だからあの、ワニのぬいぐるみの件でぼろ泣きよね。どんなに近づいてもこっちがすべてオープンにしても、気持ちには応えてくれたとしても揺らがない人っている。優しいけど、優しくするけど、それによってその人のコアな部分にはまったく変化がないっていう感じ。今ならもう少し違うかな。こっちも躍起になって頑張ったり暴こうとしたり荒療治を仕掛けたりしないだろう。さみしいことには変わりはないけど。そんで同じさみしいなら、傍にいないことよりいることを選ぶんだろうけど。じゃあ結局行動は変わらないのか。ふん。


でも今回は2番目に好きだった話、『守護神』にやられた。

30歳のフリーター、趣味は合コン、大学進学の動機はお金…という社会人大学生の祐介は、どうにもこうにも切羽詰って、「レポート代筆屋」として有名…というか伝説の社会人大学生、ニシナミユキを探し出し、代筆を頼むことにする。このニシナミユキとの会話が殆どの話なんだけど、もうなんだかものすごく励まされて、ラストのニシナミユキの言葉にはこっちも泣かされるし、ちゃらそうでちゃら男になりきれない不器用な祐介がもう大好きになる。


あと1話目の『器を探して』も。私を知ってる人には意外だろうけど、これの弥生がすごくよくわかる。最後の弥生の選択は、大局を見たらきっと些細なことなのかもしれない。このあとも、「恋したほうが負け」とばかりに理不尽さにもやもやして我侭に振り回されつつ弥生はヒロミの秘書(ていうか奴隷)をやめないだろうし、高典ともしばらくは別れないだろう。でも「選択した」っていう、そういうところ。わかる気がする。